新たな在留資格「特定技能」の概要
記事カテゴリ:法律知識
■投稿弁護士:河西 辰哉
2019年4月1日から、改正された出入国管理及び難民認定法(以下、入管法といいます)が施行され、「特定技能」という新たな在留資格が創設されました。これにより、5年間で最大34万人以上の外国人の受入れが見込まれています。
「特定技能」とはどんな在留資格か?
特定技能の在留資格は、一定の技能を必要とする業務を行う外国人に付与される在留資格です。特定技能には1号と2号があり、それぞれ「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」(1号)を有する外国人か、「熟練した技能」(2号)を有する外国人かという違いがあります。
また、分野にも限定があります。介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の14分野についてのみ、特定技能の在留資格の取得が可能です。もっとも特定技能2号は、建設、造船・舶用工業についてのみの受入れとなるため、当面は特定技能の在留資格を持つ外国人の受入れは主に特定技能1号になることが予想されます。
企業側の受入れ要件
まず、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上の給与を支給することが要件となります。賃金の同等性は賃金規定に基づいて判断され、賃金規定がない場合は企業内の同等の作業をする日本人従業員と比較されて判断されます。ただし特定技能1号の給与は技能実習2号(技能実習2・3年目)の給与水準を上回ることが想定されています。
また、受入れ企業は、受け入れた外国人(特定技能1号)を支援する義務があります。例えば、受入れ企業は外国人が十分理解できる言語で支援を実施できる体制を有していなければならず、支援計画を策定し、外国人と日本人との交流の促進に関する支援や、出入国の際の空港への送迎、住居の確保の支援等は、受入れ企業の費用で行わなければなりません。これらの外国人支援は、「登録支援機関」に委託することができます。
そのほかにも、受入れ企業が各産業分野別に設ける協議会の構成員であることや、5年以内に出入国・労働法令違反がないことなどの要件を満たす必要があります。
外国人側の在留資格の取得要件
外国人が特定技能の在留資格を得るためには、技能試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。これら試験は年に2回以上実施することが予定されています。
技能試験について、特定技能1号の場合は、相当期間の実務経験等を要する技能であって、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準の技能が求められることから、初級技能者のための試験である3級相当の技能検定等の合格水準と同等の水準が求められます。
日本語能力としては、ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準を有していることが求められ、日本語能力試験であれば原則N4以上が求められます。なお国外で日本語試験を実施するのはベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴルの9か国の予定です。
もっとも、技能試験と日本語試験は、技能実習2号を良好に修了した外国人については免除されます。
退学・除籍された留学生、失踪した技能実習生、難民申請に基づく特定活動の在留資格、技能実習を修了していない技能実習生、退去強制令書の円滑な執行に協力しない国の外国人等には、国内での試験の受験資格がないものとされています。
なお特定技能1号の外国人は、最大(通算)5年まで同在留資格で在留することができますが、家族の呼び寄せは原則認められません。
今後のスケジュール
2019年4月の改正入管法の施行と同時にすべての分野における試験が開始されるわけではありません。2019年4月から開始予定となっているのは介護、外食、宿泊の分野であり、その他の分野についてはその後順次開始されます。
当事務所では、経験のある弁護士が、在留資格の変更や呼び寄せの申請について、その要件や必要書類に関してアドバイスを差し上げることができます。また、在留資格に関する様々な申請の取次もすることができます。ぜひお気軽にお問い合わせください。