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半年前に強制退去させられた外国人が留学生として再来日することができました!

記事カテゴリ:所属弁護士の活動

弁護士 森上未紗

大学入学試験合格直後に退去強制令書の執行により本国に送還された外国人の依頼者に関して,在留資格認定証明書交付処分仮の義務付け申立てが認容されました!!

<名古屋高等裁判所平成31年3月27日決定>

 

この度,当事務所が代理人を務めた事案で,全国でも初と思われる決定を得ることができましたので,ご紹介させていただきます。

 

【事案の概要】

 平成30年12月,大学入学が決まった10代の外国人女性が事務所に相談に来られました。

彼女は,先に来日していた父親に呼び寄せられ,母親とともに彼女が5歳のときに来日しました。その後,12歳のときに家族全員が在留資格を失い,以後不法残留となったため退去強制令書が発付されていました。彼女や家族はこの退令発付処分の取消訴訟を行いましたが、敗訴し、数年前に確定していました。

彼女は,在留状況が安定せず大変な状況の中,小中高と日本の公立学校で教育を受けて優秀な成績を修め,平成30年12月に推薦入試で大学に合格しました。そこで,彼女は,大学に進学できるよう,在留資格を取得することを希望していました。

しかし,相談に来た直後の平成30年12月末,退去強制令書の執行により家族全員が本国に送還されてしまいました。

そこで,来日して大学に通学するために,送還から約3週間後に在留資格認定証明書の交付申請を行いましたが不交付の処分を受けました。この処分について争うために,裁判所に対して,在留資格認定証明書交付処分仮の義務付けの申立て等を行いました。

 

【地方裁判所の決定】

 地方裁判所は,申立てを却下しました。

その理由としては,彼女が不法残留を継続した事実は消極要素として考慮されてやむを得ない,また,本国に送還されるべき地位にあったにも関わらずあえて大学を受験したのであり,送還の結果大学で教育を受けられないとしても彼女が受忍すべきものとしました。さらに,彼女が本国の言語についてあいさつ程度の能力であることに関しては,外国で生まれ育った子どもが帰国する際に一般に生じるものであること,良好な成績を修めてきた彼女が進学に必要な言語能力を習得することは可能であること等を挙げ,有利な事情として考慮されるべきものといえないとしました。

 

【高等裁判所の決定】

 高等裁判所は,申立てを認容し,国に対し,在留資格認定証明書を仮に交付するよう命じました。

その理由としては,まず,不法残留は彼女自身の責任によるものということはできず,重大な消極要素として考慮することは相当でないとしました。また,彼女が12年間本邦に在留し,日本の教育を受けて模範的生徒であると評価を受けて大学に推薦で合格したこと等に照らし,日本に強い定着性を有していたことを認めました。その上で,上陸拒否事由が本邦にとって望ましくない外国人の入国を阻止するものであるところ,彼女の生活態度が良好で,進学後の支援も受ける予定であることは,有利な事情として積極的に考慮されるべきとしました。さらに,彼女が入国できない場合に,本国で同等の教育機関に進学したり,その能力に見合う就職先を見つけることは事実上不可能と考えられるとし,自分の能力を十分に発揮する機会を失うという重大な不利益は,彼女に有利な事情として積極的に考慮されるべきとしました。

 

【その後の状況】

 高等裁判所の決定後,すぐに入国管理局から在留資格認定証明書が交付されました。これに基づいて来日の手続きを進めていましたが,日本からの退去強制を受けて本国のパスポートが無効化されていたこと等から来日の手続きは難航しました。

 しかし,領事館等の支援を受け,退去強制令書の執行による帰国から半年ほどで再来日を果たすことができました。

 

【担当弁護士のコメント】

 彼女の本国への送還は,彼女が本国での成人年齢となる18歳の誕生日直後,大学合格から1か月もたたない年末年始の休暇中に,送還完了まで彼女ら家族が外部と連絡を取れないように入管が自宅での荷造り中まで監視するという態様で実施されました。このような入管の措置は,彼女の生活やこれまでの努力等をあまりに軽視したもので,強い憤りを覚えました。

地方裁判所の判断についても,進学に必要な本国の語学能力を習得可能とする等事実認定に無理がある上,進学できないことも受忍範囲内として人権を軽視し,司法としての役割を放棄したような内容でした。

しかし,高等裁判所の判断は,上陸拒否事由の趣旨に鑑みて実質的に裁量の範囲を限定し,不法残留に至った経緯に帰責性がないことや自分の能力を発揮する機会を失うという不利益の重大性を重視したものとなり,良い結果を得ることができました。

 日本に再来日できていなかった場合の彼女の生活や絶望感を想像すると,今回の高等裁判所の判断に安堵するばかりです。今後,彼女が大学で思う存分に勉強し,それを活かして生活していってくれることを確信すると同時に,今回の高等裁判所の判断により,入国管理局が彼女に対して行ったような人権を軽視した送還を繰り返すことがないように願います。

 

 なお,彼女の帰国前の生活,送還時の状況,その後再来日するまでの経緯については,名古屋テレビが取材をしており,テレビ朝日系列のテレメンタリー2019で「夢も,希望も~仮放免者の未来~」という題名で放映されました。気になる方はぜひご覧ください。